
「地域の人と地域の資源で、いのちある「家具や建築」をつくる。」100BANCH実験報告会

100BANCHで毎月開催している、若者たちが試行錯誤を重ねながら取り組んできた“未来に向けた実験”を広くシェアするイベント「実験報告会」。
これからの100年をつくるU35の若手リーダーのプロジェクトを推進するアクセラレーションプログラム「GARAGE Program」を終えたプロジェクトによる100BANCHでの活動報告や、100BANCHでの挑戦を経て、プロジェクトを拡大・成長させた先輩プロジェクトによるナビゲータートークを実施しています。
2026年9月25日に開催した実験報告会では、土地の自然が持つ材料やその土地の人が持つ知恵・技術を再編集し、地域の人と地域の資源で空間をつくり続けているGARAGE Program78期生「OKINA」の大野宏をナビゲーターとし、GARAGE Programを終了した5プロジェクトが活動を報告しました。
本レポートではその発表内容をお伝えします。
公共建築の最後に、住民が立ち会える仕組みを社会に実装する。
登壇者:川北大洋
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/miokuri

「miokuri」は、思い出の詰まった学校などの公共建築が解体される際に、3Dスキャンを用いて住民が立ち会える仕組みを社会に実装していくプロジェクトです。
川北:私の母校である茨城県つくば市の吾妻小学校が、建て替えに伴って来年度に解体されることになりました。解体される前に一度歩いてみようと学校へ連絡を入れ、今年の6月に実際に校内を歩いてみたのですが、「廊下でジブリの音楽を流しながら雑巾がけをして、サボっていた友だちが怒られていたな」「この4年1組の教室で授業を受けていたな」と、普段は思い出さないような記憶が次々とよみがえってきたんです。この体験を、もっと多くの人に届けていきたい、と思ったのがプロジェクトのきっかけです。
実際に私と同じような体験をするには、2つのハードルがあります。1つは、卒業生が母校の解体をそもそも知らないということです。東京に出た同期に話をしても、みんな「え、解体されちゃうの?」と驚きます。もう1つは、母校が解体されることを知っていたとしても、地元に帰って見学することが時間的に難しいということです。この課題に対し、私はGARAGE Programの3ヶ月間で2つのサービスをつくりました。1つ目はLINEによる自動通知です。公式LINEで母校を登録すると、解体や周年記念のタイミングで通知が届き、同窓会などを開くフックになります。2つ目は校内の3Dスキャンです。現在、学校のお別れ祭などでは50万円ほどかけて記念誌を100部発行するといった方法が中心です。しかし、校舎を3DスキャンしてURL1つで共有できるようにすれば、現地に行けない人もオンラインで母校とのお別れに参加することができます。
調べてみると、日本全国にある約2万2,000校の公立小中学校のうち、年間約450校が解体されているそうです。歴史的な建築物には3D記録の補助金が出ますが、思い出の詰まった地元の学校は、写真の記念誌程度でしか残されていませんでした。この7月に100BANCHに入居した当初はLINEの通知サービスだけを想定していましたが、それだけでは「学校を歩いた思い出を共有したい!」という根本的な思いを解決できないことに気づきました。そこから約10件のヒアリングを行い、実際に茨城県のつくばみらい市と常総市の小学校2校で3Dスキャンの許可をいただくことができました。GARAGE Programの3ヶ月という区切りがあったからこそ、急ぎでここまで進めることができたと思います。

「今後は茨城県の2校で無償の3Dスキャンを行いますが、そこからどうやって低コストな有償モデルを回していくかが課題です。僕が現地に行くのではなく、地元の人自身が3Dスキャンできる仕組みをつくれれば、全国450校すべてをカバーできるのではないかと考えています。」と川北は話しました。
教育と仕事をつなぎ、国境を越えて可能性が循環する世界をつくる
登壇者:山手禮
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/frontierpass

「FrontierPass」は、ナイジェリアをはじめとする発展途上国の若者を、学習から実践、就職までを一貫して支援し、日本や海外の企業に開発人材などを提供することを通じて、機会格差のない世界を目指すプロジェクトです。
山手:私たちが活動の拠点としているナイジェリアは、アフリカ最大の人口を誇り、公用語が英語という非常にビジネスがしやすい環境が整っています。しかし、ナイジェリアに進出する企業にとって一番大きな課題は、「現地のどのような人材を信頼していいのかわからない」ということです。私たちはその「信頼の壁」を乗り越え、信頼できる人材や現地のネットワークを企業へ紹介することができます。事業としては、開発のアウトソーシングや人材紹介、アフリカの人材開発支援などをおこなっています。
GARAGE Programの3ヶ月間では、当初「受託案件を実際に稼働させる」「現地の学生に収益を生み出す」「継続的に案件を回せる小規模チームを形成する」という3つの目標を掲げていました。しかし、結果としてはなかなか思い通りにはいきませんでした。受託案件を探したり、100BANCHでのイベントを企画したものの集客できず中止になってしまったり、現地ナイジェリアで第1期生となる「Cohort(コホート)」を集めてトレーニングをしたり、ハッカソンの準備をしたりと、本当に多くのことに同時に手を出してしまいました。最大の反省点は、やっていることが色々な方向に散らばってしまった結果、僕たちのキャパシティを超え、結局どこに向かっているのかが見えなくなってしまったことです。これらの反省を踏まえ、ここからさらに3ヶ月間、あらためて検証をおこなっていくことになりました。これからの具体的な流れとしては、あらためて人材市場のニーズを調査して検証すること、そして第1期生たちが実際に社会から求められる人材になるためにはどのような経験を積んでもらう必要があるのかをしっかりと検証していくことです。
「これからこの第1期生たちのプロジェクトをしっかりとやり遂げ、いずれは彼らの就職へとつなげていきたいと考えています。」と山手は話しました。
「ポイ捨て」を、街で一番エキサイティングな「広告メディア」に変える。
登壇者:木戸洵成
プロジェクト詳細: https://100banch.com/projects/bingo

「BinGo」は、広告の入ったゴミ箱を背負ったスタッフが街を歩きながらゴミを回収することで、ゴミ捨てを広告体験に変え、新たな文化の創出を目指すプロジェクトです。
木戸:僕らは今、街のゴミ問題に向き合っています。現在、テロ対策やコストの問題で街からゴミ箱が撤去され、それがポイ捨てを招く一因になっています。さらにインバウンドの増加で人が増え、SNSでも「日本にはゴミ箱がない」という投稿が拡散されている状況です。しかし、固定のゴミ箱を設置するにはかなりコストがかかります。そこで安価にゴミ箱を増やしていくビジネスとして考えたのが「BinGo」です。スタッフが広告が掲載されたゴミ箱を背負って街を歩き、「ゴミ箱ですか?」「捨てていいですか?」と声をかけられたらゴミを回収するという仕組みです。あえてロボットではなく人にしている理由は、コミュニケーションを通じてメッセージを発信できるからです。特に最近はインバウンドの方が多いので、道案内や観光案内を同時に行うことで社会課題を解決していきたいと考えています。
僕らのビジネスモデルは広告ですが、従来の広告のあり方を変えることができているのでは、と思っています。最近のネット広告やトラック広告はどうしても「うざい」と思われがちですが、僕らはゴミを回収するので街の人から感謝されます。そうした「ポジティブ広告」として企業からお引き合いをいただき、最近では、坂本龍一さんのイベントプロモーションで全国5都市を回るなど、この1年で着実に実績を積み上げてきました。
GARAGE Programの3ヶ月間で取り組んだことの1つは、SNSで拡散される要因の分析と言語化です。これまでは偶然のバズで案件を獲得していましたが、それだと成長が続かないため、なぜ拡散されるのかを分析しました。その結果、狙ってつくった投稿がInstagramで16万回以上再生され、Xでも引用されて約500万インプレッションを記録するなど、意図的にバズを起こせるようになってきました。また、これまでやってこなかった雨天時の実装検証も行い、雨の日でも十分に活動できることがわかりました。さらに、ゴミ箱の形についても検証を重ねました。結論としては背負う型が一番良かったのですが、現在の段ボール製のゴミ箱は広告案件ごとに使い捨てになってしまい環境に良くありません。そこで、広告の入れ替えができて継続的に使えるサイネージ型のゴミ箱をつくることにしました。すでに業者さんと設計図をつくり制作をはじめており、クラウドファンディングの準備も進めています。

「今後、この活動を通じて、外国人の方々に、日本はゴミまで回収してくれる、という体験を提供したり、若い人たちが社会課題に関心を持つきっかけをつくったりしながら、社会全体のリテラシーを向上させて環境問題に向き合っていきたいです。」と木戸は話しました。
「飲む」と「飲まない」の間に、新たなスイーツ体験を。
登壇者:久保田悦司
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/horoyoi-sweets-lab

「Horoyoi Sweets Lab」は、アルコールが苦手な人でも楽しめるお酒入りスイーツの開発を通じて、お酒を飲む人も飲まない人も共に楽しめる新しいスイーツ体験を生み出すプロジェクトです。
久保田:私たちはアルコールの入ったスイーツをつくっています。私自身がお酒を飲めない体質で、「お酒は苦手だけど、お酒が入っているスイーツなら食べたい。」という個人のニーズからこのプロジェクトははじまりました。しかし進めていくうちに、飲めない人だけでなく、お酒が好きな人から苦手な人まで、みんなが一緒に楽しめるアルコール入りスイーツが欲しいと思うようになりました。そこで目をつけたのがティラミスです。世の中の人気スイーツにはアルコールを入れる余地があまりなく、一方で既存のお酒入りスイーツといえばボンボンショコラなどに限られます。人気があってお酒も入っているものを考えた結果、ティラミスにたどり着きました。
実際にティラミスを作って皆さんに食べていただいたところ、「お酒を感じる」「もっとお酒が強くてもいい」といった様々な感想をもらい、「お酒は苦手だけどこのティラミスなら食べられる」という方にも出会うことができました。この体験を軸に、アルコールが本当に無理な人にはノンアルコールを、お酒が強い人には度数の高いものをというように、味とお酒の強さを調整して多くの人に食べてもらえるプロダクトを展開しています。現在はブランドとしての立ち上げに向けてラインナップを鋭意制作しているところです。
これまでプロダクトを広めるために小田原や関内、渋谷などでマルシェに出店し、1時間で2万8,000円を売り上げたり、スイーツコンテストに選ばれたり、といった嬉しい成果を出すことができました。今後は東銀座や、北千住マルイでの期間限定出店も決まっています。そして、GARAGE Programの3ヶ月間を通じて販売の機会に多く恵まれたことが一番の収穫でした。他のプロジェクトメンバーなど色々な方との会話を通じて、「カフェのオーナーを知っているよ」と紹介していただくことも多くありました。

「現在、ほぼ1人で活動しているような状態なので、これからは仲間を集めながらブランドの立ち上げを本格的に進め、このスイーツ体験をさらに広めていきたいです。」と久保田は話しました。
折り紙・工作に潜む数理から生まれた装置で、「気づき」を立ち上げる!
登壇者:山﨑玲美
プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/kizuki_0

「Kizuki_0」は、不思議な動きや形の折り紙からインタラクティブな作品をつくり、人々がそれに触れて探索することで様々な気づきが生まれるような、新たな体験空間を生み出すプロジェクトです。
山﨑:6ヶ月間のGARAGE Programでの活動を終えて、なぜ自分がこの活動をしているのか、その本質がやっとわかってきました。それは、自分の創造性によって誰かの創造性を豊かにし、人を前向きにしたり幸せにしたりしたかったからです。私は幼い頃から折り紙や工作、数理的思考が得意だった一方で、限定的な言葉や周囲の価値観によって自由な感覚や考え方が狭められてしまうことに強い違和感を抱いてきました。だからこそ、アートや科学を万人に開かれた体験の場にし、その理論を基盤として人々の創造性が花開くような場所をつくりたいと思うようになりました。
「Kizuki_0」では、幾何学的な折り紙に触れているときの面白さを拡張し、「気づき」の装置をつくっています。直感的に触れて夢中に探索していくと、そこに潜む数理的な現象を感覚として捉えることができるのが特徴です。この6ヶ月間で3つのイベントに出展し、4つの装置を制作しました。ナナナナ祭では、幾何学折り紙と2つの装置に触れる体験を提供し、185件ものコメントを集めました。半数近くの方から形状や感覚への驚きなど直感的な反応を得られた一方で、プロジェクトの内容や装置の使い方を伝えることには苦戦し、ガイドや説明方法を改善する必要性を感じました。
ナナナナ祭の後、今後の活動を考える中で、私にとっては馴染みのある幾何学折り紙も最新の研究も、はじめての人から見ればどちらも「はじめての体験」であることに気づきました。そこで、自分自身の最新研究を基盤にし、研究にはじめて出会ったときの感覚をそのまま装置にして、9月の「Maker Faire Tokyo」に出展しました。デザインやガイドにこだわった結果、来場者の方にすぐ手に取って直感的に探索してもらうことができました。代表的な装置である「ミウラ折り楽器」は環境の影響などでうまく作動しない悔しい場面もありましたが、インタラクションが人々の探索を促す傾向があることも確認でき、大きな手応えを感じています。

「今後は制作の進め方そのものから見直し、ガイドに頼らなくても、ユーザーが自由に触るだけで感覚的に体験が成立する装置を目指していきます。」と山﨑は話しました。
実験は未来をつくる活動そのものです。
未だ見ぬ未来への手がかりをつかもうと、がむしゃらに実験に打ち込む若者たちを一緒に応援しませんか?
思う存分実験できる場としての100BANCHを継続し、さらに発展させていくために、皆様のご支援をお願いします。
100BANCH Supportersの詳細・参加方法はこちら:https://100banch.com/supporters
次回の実験報告会は10月22日(木)に開催。ぜひご参加ください!

(撮影:鈴木 渉)

【こんな方にオススメ】
・100BANCHに興味がある
・GARAGE Programに応募したい
・直接プロジェクトメンバーと話してみたい
・テクノロジーを活用したプロダクト開発に興味がある
・3DCG技術を用いた新たな表現や仕組みづくりに興味がある
【概要】
日程:10/22(木)
時間:19:00 – 21:30 (開場18:45)
会場:100BANCH 3F
参加費:1500円(1ドリンク付き)
参加方法:Peatixでチケットをお申し込みの上、当日100BANCHへお越しください
詳細はこちらをご覧ください:https://100banch.com/events/83951/