• イベントレポート

好奇心とともに、自分の仕事を創り広げる 実験報告会&メンタートーク

これからの100年をつくる、U35の若手リーダーのプロジェクトを推進するアクセラレーションプログラム「GARAGE Program」。3カ月目と活動期間終了のタイミングで、どのような実験を行ってきたかを発表する実験報告会とメンタートークを実施しています。

2021年3月の実験報告会は、&Co.の横石崇さんのメンタートークを実施。また、6プロジェクトがそれぞれの活動について成果報告を行いました。

目的ではなく手段から考える

働き方の祭典「Tokyo Work Design Week(TWDW)」や鎌倉のコレクティブオフィス「北条SANCI」の運営など、さまざまなプロジェクトを通して“ならず者”と出会ってきたという横石さん。100BANCHメンバー、そして100BANCHへの入居を検討している人たちに向けて自分の仕事の創り方や売れるためのヒントについて話してくれました。

メンターの横石さん

横石崇さん プロフィール

&Co.,Ltd.代表取締役/Tokyo Work Design Weekオーガナイザー
1978年、大阪市生まれ。多摩美術大学卒業。広告代理店、人材コンサルティング会社を経て、2016年に&Co., Ltd.を設立。ブランド開発や組織開発をはじめ、テレビ局、新聞社、出版社などとメディアサービスを手がけるプロジェクトプロデューサー。また、「六本木未来大学」アフタークラス講師を務めるなど、年間100以上の講演やワークショップを行う。毎年11月に開催している、国内最大規模の働き方の祭典「Tokyo Work Design Week」では、6年間でのべ3万人を動員に成功。鎌倉のコレクティブオフィス「北条SANCI」支配人。著書に『自己紹介2.0』(KADOKAWA)、『これからの僕らの働き方』(早川書房)がある。100BANCHメンター3期目。

 

横石:今日は「僕は武器じゃなく食器を配りたい」というテーマでお話をさせてもらおうと思います。最近聞いた話で、道具やテクノロジーというのは大きくわけると2つしかないそうなんです。ひとつが武器。相手に勝つための道具です。ふたつ目が食器。器ってものすごいイノベーションですよね。水と保管したり、相手と一緒に食べたり。食器や器が生まれたことによって、一緒になにかをするということができるようになりました。みなさんも武器だけでなく食器も手にして、世界を変えていってほしいなという話をしたいと思います。

横石さんからの「一枚目の食器」として100BANCHメンバーに話してくれたのが、「どうすれば自分の仕事を創れるか?」ということ。構造がめまぐるしく変化して、組織から個性が大切な時代となった今、自分で責任を持てる活動をしてほしいと言います。

横石:スタートアップの経営者は、今あるものを使って、なにができるのかを問う傾向が強いんだそうです。これからの未来って予測不可能なわけですよね。自分の仕事をつくりたいのであれば、ジグソーパズルのように既にある場所に自分をはめていくよりも、パッチワークのように自分たちの活動をつくっていく人生のほうがいいと思います。

僕がTWDWを始めた10年前は、今のように働き方を話す機会がありませんでした。それで話す場をつくろうと6人でスタートしたものが、今ではのべ3万人が参加するイベントになりました。最初はお金もなかったので、いろいろなオフィスの会議室を使っていない夜の時間に無料で借りて、同時に働き方について話すことから始めました。できること、あることから始めてみる。目的ではなく手段から考えてみることも大切だと思っています。

 

なぜ、あの人は売れたのか?

続いて横石さんが「二枚目の食器」として紹介したのは「なぜ、あの人は売れたのか?」という話。世界的なアーティストとして活躍したアメリカの画家・ジャン=ミシェル・バスキアは、いろいろな人と接点を持つように活動していたことが、成功に至った要因だったという例を上げ、売れるヒントについて話してくれました。

横石:アーティストも100BANCHのメンバーも、万人受けするようなことをやってないわけですよね。そういう人ほど、ネットワークについて理解していないと前に進めないんです。理解してくれる人を見つけたり、成功が生まれるネットワークについて観察していくといいと思います。

横石:100BANCHが生んだイノベーションスター、「ヘラルボニー」プロジェクトの松田崇弥さんがまだ注目される前に「渋谷の人とつながりが持ちたい」と相談されたことがありました。そこで僕が登壇するイベントに、スタッフとして潜り込んでもらって。それがきっかけで渋谷区の副区長に直談判をして、渋谷の駅の工事の囲い込みにヘラルボニーの絵を使ってもらうことになりました。松田くんは自分は運がいいって言うけれど、それは結果です。いろいろな接点があるからこそ、彼にいい話が舞い込んできたんだということです。仕事ができる人って、だいたい運がいいんですよ。

運がいいということを、データサイエンティストの矢野和夫さんは、「到達度が高い」と言うそうです。困ったときに聞ける人、相談できる人が周りにいるかどうか、到達度が高いかどうかが成功に影響しているそうです。

横石:最後に「三枚目の食器」です。では到達度を高めるには、具体的にどうしたらいいのか。実際に矢野さんに聞いてみたところ、「越境するしかない!」という答えが返ってきました。とにかく人に会えばいいという話ではなくて、何にワクワクドキドキしていますかということが一番のポイントになるんじゃないかと思っています。100BANCHも入ったら変わるわけではありません。好奇心がぶつかり合うからこそ生まれるものがあると思っています。好奇心のある方はぜひ、100BANCHのGARAGE Programに参加してもらえたらいいなと思っています。

 

GARAGE Program プロジェクト成果報告

後半は100BANCHに入居して3カ月や半年の区切りを迎えたプロジェクトメンバー登壇し、これまでを振り返りました。横石さんからそれぞれのプロジェクトに向けて寄せられたコメントとともにお伝えします。


kikkake-kichi

登壇者:山角亮介

「やりたい!」を「できない…」で終わらせない世界の実現を目指します!

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/kikkake-kichi

やりたいことがあるけど踏み出せない、という人が動き出すきかっけをつくるコミュニティ形成をしているkikkake-kichi。100BANCHではコミュニティのアップデートに取り組み、日常的に活用できるアプリの開発やSNSの運用を行ってきました。

 山角:新たな仮設として、長期ビジョンを立てることが大切なんじゃないかと考えるようになりました。日々の小さな目標を達成していくことも大切なんですけど、何のためにやっているのかわからなくなるメンバーが多いんです。残りの活動期間では、10年後の目標設計メソッドの開発にも取り組んでいこうと思います。

横石さんのコメント:僕の視点で言うと、100年後の理想ならわかるけど、10年後の目標ってあんまり関係ないんじゃないかと思っています。コントロールする必要ないんじゃないかな、それは組織でさえも。100BANCHでやる以上は、大きな会社がやっているような枠から一回離れたほうがおもしろくなるんじゃないかなと思いました。

 

  YORISHIRO

登壇者:加山晶大

あらゆる衣服に生命感を吹き込むプロダクトで新たな表現の場を生み出す

プロジェクト詳細:https://100banch.com/yorishiro

 洋服を動かすハンガー状のデバイスを開発している加山さん。商業施設などでデバイスを使ってもらえることを目標に、インタビューをベースにしたリサーチや技術の検証、実験などを行ってきました。

 加山:デバイスの動きを少しずつ変えたものを100BANCHメンバーに見せて、どのような印象を受けるか意見をもらうことができました。6月にポップアップショップでの導入が決まっているので、今後はよりスムーズな動きを検証していきます。また、衣服に合わせた動きを生成していけることを理想に、開発を続けていきたいと思います。

 横石さんのコメント:次のステップに進もうと思うなら、無茶振りしてくれる相手を見つけてみてください。今は自分で深堀りしている印象を受けたので、無茶振りされることで幅を広げていくことができるんじゃないかと思います。

 

ALion

登壇者:中村永青、宮崎怜音

閉ざされた交流を僕たちが開く、Z世代感覚のニューツーリズム!

プロジェクト詳細:https://100banch.com/alion

 英語が得意なZ世代の中村さんと宮崎さんが、自分たちの視点で飲食店や旅館などを紹介することで、世界中の人に知ってもらう機会をつくるプロジェクト。実際に新潟の宿のホームページ内に英語のテキストを掲載してもらったり動画制作をしたりと、活動を始めています。

中村・宮崎:プロジェクトでSNSの運用を始めたものの、まだ僕たちがやっていることがあまり知られていないので、この取り組みを広めていくにはどうすればいいかをさらに考えていきたいです。また今後は自分たちのプラットフォームをつくりながら、活動の拠点を東京と新潟以外にも広げていきたいと思います。

横石さんのコメント:いい意味で、すごいおせっかいだと思います。どうしたらプロジェクトが加速していくか考えたとき、2人がいいなと思うお店のページを勝手に英文化して、送ってしまうのが一番早いんじゃないかなと思いました。ぜひ挑戦してみてください。

 

Blossom,the project

登壇者:中川愛

社会運動、芸術、文化を融合する革新的なメディアプラットフォーム

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/blossom-the-project

メンタルヘルスや社会問題について発信するインスタグラム、そしてウェブマガジンを立ち上げた中川さん。100BANCHに入居後、ともに活動していく仲間を募り、45本もの記事を公開し続けてきました。

中川:さまざまな記事を出すことで、人種・アイデンテティ、ジェンダー・フェミニズム、芸術にまつわる記事がよく読まれることがわかってきました。今の読者層が若い方が中心なので、今後どう読者層を増やすことができるのかに取り組んでいきたいと思っています。

横石さんのコメント:自分の問題意識がコンテンツに向いてるのがいいですよね。彼女がやっているコンテンツファーストなやり方は、まさに時代にフィットしたやり方だと思います。多様性のあるコンテンツを突き詰めれば突き詰めるほど、他のメディアからも声がかかるようになると思います。

 

KAGUYA

登壇者:井下恭介

ライトシェード型バイオリアクター「KAGUYA」-酸素を生み出す未来の照明-

プロジェクト詳細:https://100banch.com/kaguya

 LEDライトと微細藻を用いて、空気中の二酸化炭素を酸素に変換していく照明を開発しているKAGUYA。微細藻が培養されていくことで灯りが緑色に変わっていくため、どれだけ二酸化炭素を酸素に変えていったかという変化を視覚化できるプロダクトを目指しています。

井下:この3カ月では実際に微細藻を培養して、どれだけ緑色になるのかを観察したり、ペーパーモックで形状の検討をしてきました。今は実際に使用するアクリルの図面を引いて、モデルをつくっているところです。今後の目標としてプロダクトを販売できるレベルまで精度を高めていきたいと思います。

 横石さんのコメント:いい色を見ましたね。未来の色ってこういう色なのかと。今つくっているものの先にどういう広がりがあるのか、あの緑が街のどういう場所でみえると面白いのか、社会実装されたイメージも見れると、より人の心を動かしていけるのではないかと思いました。

 

  comel

登壇者:沼倉大将

お米の温もりを通して、忙しい現代人に幸せを届けたい

プロジェクト詳細:https://100banch.com/projects/28511/

半年間100BANCHで活動してきたcomelは、当初の炊飯宅配事業に壁を感じたため、現在は一人ひとりの心理面や栄養面に沿って雑穀米や玄米を提案する、パーソナルフードサービスを展開しています。お米のブランドを展開するに留まらず、メニュー開発やプロデュース、またオンラインサロンの立ち上げなどにも取り組んでいます。

沼倉:お米の消費量が減ってきている時代だからこそ、できることがあると考えています。現在、六本木でお米の料亭を開く準備を進めています。また、ただのお米屋さんではなく、ライフスタイルブランドになっていくために、今後は食器や家具など日常を彩る商品の販売もしていきたいと考えています。

 横石さんのコメント:商品を売ることが先行しがちになると思うんですが、ライフスタイルブランドというのは、習慣を売るということだと思います。ビジネスモデル的にもサブスクリプションに近づくと思うので、ぜひ習慣化の戦略をつくっていってほしいと思います。

 

さまざまな起業家と出会ってきた横石さんだからこその具体的なアドバイスは、100BANCHメンバーが次のステップに向かっていくための指標になりました。

メンターや同じ100BANCHメンバーなど、100BANCHという場での出会いやつながりを活かし、プロジェクトがどのように進化していくのか。今後の活躍が楽しみです。

 

(撮影:鈴木 渉)

<次回実験報告会>

100年先の未来を描く6プロジェクトがピッチ!

4月実験報告会&メンタートーク 秋吉 浩気(VUILD株式会社)

日時:2021年4月28日(水) 19:00〜21:00

無料 定員100名

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※ZOOMウェビナーでの開催になります。

Peatixの配信観覧チケット(無料)に申し込みをいただいた方に配信URLをお知らせします。 

https://100banch-202104.peatix.com/

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『実験報告会』は100BANCHの3ヶ月間のアクセラレーションプログラムGARAGE Programを終えたプロジェクトの活動ピッチの場です。

また毎回100BANCHメンター陣から1人お呼びし、メンタートークもお送りいたします!

今回のゲストはVUILD株式会社 CEOの秋吉 浩気さんです!

【こんな方にオススメ】

・100BANCHや発表プロジェクトに興味のある方

・GARAGE Programへの応募を検討されている方

【概要】

 日程:4/28(水)

 時間:19:00〜21:00

 参加費:無料

 参加方法:Peatixの配信観覧チケット(無料)に 申し込みをいただいた方に配信URLをお知らせします。

 

【タイムテーブル】

19:00〜19:15:OPENNING/ 100BANCH紹介

19:15〜20:00:メンタートーク

 ・秋吉 浩気(VUILD株式会社 CEO) 

20:00〜20:45:成果報告ピッチ&講評 

Assassin from India|三軒茶屋のシェアハウスで育んだ文化とヒューマンリソースをインストール

white squat|空家白占拠集団white squat 渋谷白塗開始ナリ

Z-Rakugo|Z世代の視点で落語を楽しむ新しい「寄席」のカタチを渋谷の街を舞台にデザインする!

The_MIX|うっかりアセンション?!スパイスの力で編纂する現代版「味覚の生理学」

Color Fab|消えない「虹」を3Dプリントする。ー未来の色彩工芸ー

GLOBAL MICRO TOUR|異文化の混ざり合う暮らしのきっかけをつくり、多文化共生をもっと当たり前に! 

20:45〜21:00:質疑応答/CLOSING

 

【メンター情報】 

秋吉 浩気
VUILD株式会社 CEO 

<プロフィール>

アーキテクト/メタアーキテクト。1988年大阪府生まれ。芝浦工業大学工学部建築学科にて建築設計を専攻。慶應義塾大学ソーシャルファブリケーションラボにてデジタルファブリケーションを専攻。 

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