このフルーツ、何者?ガーナの“ひみつの果実”を飲んでみよう!
「POTƐNTIA.」は、ガーナで廃棄されてきたカシューフルーツを、現地の人々に愛されるドリンクとして育てることで、農家さんの収入向上に加え、加工・流通・販売に関わる仕事づくりや、ガーナ発の産業創出につなげることを目指すプロジェクトです。ガーナの主要産業の一つであるカシューナッツ。その一つひとつに実る果実は、約90%が未活用のまま廃棄されています。
ナナナナ祭2026では、そんなカシューフルーツのジュースを来場者に試飲してもらいながら、その味わいやガーナについて知ってもらう展示を企画しました。これまで捨てられてきた果実に秘められた可能性を来場者とともに探った3日間を、POTƐNTIA.の寺田瑛梨が振り返ります。
ナナナナ祭2026で、POTƐNTIA.は、ガーナで約90%が廃棄されているカシューフルーツを活用し、農家さんの新たな収入源をつくる「Cashew Fruit Project」について展示を行いました。会場では、カシューフルーツジュースの試飲に加え、果実の模型や活動紹介のパネル、ジュースを搾ったあとの搾りかすなどを展示しました。


「カシューナッツ一つに、こんなに大きなフルーツが実っているの!?」
「マンゴー・パイナップルみたいでおいしい!」
3日間を通して、初めてカシューフルーツを知る方から、たくさんの驚きの声をいただきました。

カシューフルーツを知ってもらうことは、今回の展示の入口の一つでした。カシューフルーツという一つの素材を入り口に、まだ見つけられていない可能性に目を向け、すでにそこにある価値が、人に届く形になり、地域の中で新しい仕事や産業へつながっていく。 その先にPOTƐNTIA.が描いている世界まで、来場者の方に感じてもらいたいという思いがありました。
POTƐNTIA.は、「ポテンシャル」という言葉が由来です。私たちが大切にしているのは、まだ十分に見出されていない可能性に光を当て、その可能性が動き出すきっかけをつくること。
カシューフルーツも、価値がないから捨てられてきたわけではありません。栄養価が高く、甘酸っぱくておいしい果実でありながら、とても傷みやすく、加工や流通の仕組みがほとんどないため、産地では長い間「捨てるもの」として扱われてきました。
今回の展示では、この視点をカシューフルーツだけの話で終わらせず、来場者の方にも自分の身の回りへと広げてもらいたいと考えました。そこで置いたのが、
「あなたのまわりにあるPOTƐNTIA.をひとつ教えてください!」
という問いです。

当たり前すぎて気づいていないもの。十分に活かされていない場所や素材、人やアイデア。会場には、さまざまな「POTƐNTIA.」が集まりました。
カシューフルーツという一つの果実をきっかけに、「では、自分の周りには何があるだろう」と考えてもらうこと。それも、今回の展示でつくりたかった体験の一つでした。
一方で、可能性に気づくだけでは、それは農家さんの収入にも、地域の仕事にもなりません。買い取る人がいて、加工する仕組みがあり、商品として届ける方法があって初めて、その可能性は社会の中で動き始めます。
では、その仕組みをどこで、誰がつくるのか。
その土地にある資源を、誰が商品や産業として育て、その過程で生まれる仕事や技術をどこに残していくのか。
この問いを考えるとき、アフリカが長く置かれてきた経済的な立場にも目を向ける必要があります。
アフリカの多くの地域では、植民地期に、カカオや綿花、鉱物などを国外へ送り出す「原料供給地」としての経済構造が形成されました。現在も、農産物や鉱物を原料として輸出する一方、その先の加工や製品化による大きな付加価値が国外で生まれるという非対称な構造が残っています。
原料はその土地から生まれていても、その先の加工や商品化は、産地の外で行われてきた 。
カシューフルーツに向き合う中で、この点もPOTƐNTIA.が考えたいテーマの一つになっていきました。
地域にある資源や、そこで育まれてきた知恵や文化を見つめ直し、今の暮らしや市場に届く形へと再編集する。そして、それを地域の仕事や産業につなげ、そこで生まれた商品や文化を、その土地から国内外へ発信していく。
これまでの「原料をつくり、外へ送り、外で加工・商品化される」という矢印だけではなく、地域の中から可能性を見つけ、形にし、育て、その土地から国内外へ発信していくという新しい矢印をつくりたいと考えています。
原料供給地から、価値の発信地へ。
その先に残したいのは、所得や雇用だけではありません。「自分たちの土地には、こんな可能性があったんだ」「ここから新しいものを生み出せるんだ」と感じられるような、地域への誇りも一緒に育っていく循環をつくりたいと思っています。
この考えは、今回展示でもう一つ設置した問いにもつながっています。
「ガーナで暮らす人たちに、聞いてみたいことや伝えたいことはありますか?」

ここで集まった質問は、次にガーナを訪れる際に、実際に現地で暮らす人たちに聞いてくる予定です。そして、そこで聞いた答えや交わした会話を、日本に持ち帰って伝えていきたいと考えています。
日本でPOTƐNTIA.の活動していると、日本人である私が、ガーナについて説明する場面がどうしても多くなります。 でも、価値を地域の側で育て、発信していくのであれば、商品をどこでつくるかだけでなく、その土地のことを、誰がどんな言葉で伝えるのかも大切だと思っています。
日本で生まれた問いをガーナへ持っていき、ガーナで暮らす人たちの言葉を日本へ届ける。そうしたやりとりを重ねることで、そこで暮らす人たちの考え方や文化、地域を見る視点そのものも、ガーナから外へと伝わっていく。それも、POTƐNTIA.が考える「価値の発信地」の一つの姿です。
ナナナナ祭を終えたあと、嬉しい出来事がありました!会場に来てくださった方と別のイベントで偶然再会した際、「カシューナッツにフルーツがついているって、友達に自慢しちゃった!」と話してくださいました。その一言が、とても嬉しかったです。
知らなかったものに出会い、その存在や可能性を、自分の言葉で誰かに伝えたくなる。見過ごされていたものへの見方が少し変わり、その気づきがまた次の人へと伝わっていく。今回の展示を通して、そんな小さな広がりが生まれたことも印象に残っています。
POTƐNTIA.が描いている未来に向けた、最初の実験がカシューフルーツです。ナナナナ祭で生まれたたくさんの問いを持って、次はガーナへ。見過ごされてきたこの果実が、地域の新しい仕事や商品になり、そこからどんな広がりが生まれていくのか。現地で一つずつ確かめていきたいと思います。
ナナナナ祭でPOTƐNTIA.の展示に足を運んでくださった皆さん、問いや言葉を残してくださった皆さん、本当にありがとうございました!

