Books as Memory

皆さんは、本を読んでいて忘れられない一行「killer phrase」に出会ったことはありますか?
小さな“忘れたくない”をかたちにする記憶のプロダクトブランド【yomiyomi】と、“読んだら後戻りできない”本を選ぶ本屋【All Books Considered】のコラボレーション企画【Killer Phrase Book】。
yomiyomiは、「今日の思い出を、一生のお守りに。」をコンセプトに、記憶がモノを通して生き続ける世界を目指すブランドです。スマホをかざすと1秒で思い出がよみがえる「思い出召喚ステッカー」や、歓声に反応して写真を出力する「Shout Camera」といった新しい思い出の残し方を日々探索しています。
一貫してやっているのは、そのときの気持ちを、あとから何度でも取り出せるかたちにして残すことです。記憶は放っておけば薄れていく。けれどモノに宿していれば、手に取るたびに戻ってくる。そう考えたとき、本ほど「記憶が宿ったモノ」として身近な存在はないと気づきました。読み終えても捨てられない一冊がある。ページを開けば、読んでいたときの自分の状況まで一緒に思い出される。本はもともと、記憶の器なのではないか。
All Books Consideredを営む中田健太郎さんは、九州大学の後輩です。「いつか一緒に何かやりたいね」と話してはいたものの、具体的な形にはなっていませんでした。本というクラシックなメディアに、デジタルの視点から新しい切り口をつくりたい。その思いが重なって、ナナナナ祭2026が、話していただけの「いつか」を実際に動かす機会になりました。

古びても捨てられない本がある。自分を変えたその一行=キラーフレーズを、誰かと分かち合えたら。
Killer Phrase Bookは、好きな本の一行を投稿するウェブプラットフォームです。本のバーコードをスマホでスキャンすると、その一冊に印象深い一節を残せます。投稿は本ごとに集まり、同じ本から他の人が抜き出した一節を読んだり、コメントを残したりできます。

一気読みした勢いでスキャンしてもいい。本棚でふと見つけて読み返した本でもいい。大事なのは、手元の一冊が、内容は同じでもあなただけの読み方に変わっていくこと。そして、他の人の読み方を知ること。

この企画は、ナナナナ祭2026での展示としてスタートしました。本というクラシックなメディアに、デジタルの視点から新しい切り口をつくりたい。そんな思いから、書店「All Books Considered」を営む中田健太郎さんとの共同プロジェクトとして開発しました。

もともとはスマホ向けに設計していましたが、会場でより多くの方に関心を持ってもらい、仕組みをひと目で理解してもらうために、デスクトップ版もあわせて用意しました。画面を大きく見せられることで、通りがかった方にも「これは何をするものか」が伝わりやすくなったと感じています。

会場での反応は、想像していた以上でした。「アイデアが面白い」「UIがいい」という声を多くいただき、実際にその場でKiller Phrase Bookを使って本を登録し、感想を投稿してくれる方もいました。着眼点そのものを評価いただく機会が多く、まずはこの発想自体が新鮮に受け取られたことが、素直にうれしかったです。
一方で、著作権的な懸念を指摘する声もありました。本の一節や感想の扱い方については、今後サービスとして育てていく上で丁寧に設計し直す必要がある論点として持ち帰っています。

印象的だったのは、想像していなかった反応です。「本の好きな一行をメモ帳に集めている」という方に出会いました。「刺さった一行」を軸に据えたのは私たち自身の直感的なアイデアでしたが、すでに同じような習慣を持つ人が実在していたという事実は、この仕組みが特別な行動を強いるものではなく、すでにある感覚を少し表に出すだけのものである可能性を示していると捉えています。

今回のプログラムは、中田健太郎さんとの共同プロジェクトとしては初のお披露目でした。そのため最も検証したかったのは、機能の完成度以上に「このアイデアを一般の方が受け止めてくれるかどうか」という点でした。
結果として、多くの方が足を止め、話を聞き、実際に使ってくれました。バーコードを読み込んで一行を投稿する、シンプルな体験にもかかわらずKiller Phrase Bookに関心を持ってもらえたことは、「本というメディアに新しい切り口をつくりたい」という私たちの仮説に一定の芽があることの裏付けになったと考えています。

この企画を通じて実現したかったのは、本というものの面白さに、もう一度立ち戻ってもらうことです。本を「読むべきもの」「勉強するもの」としてではなく、生活の中にあるカジュアルなエンタメとして捉え直したい。今回の展示は、そのための最初の一歩です。
今後は、Killer Phrase Bookを一度きりの展示で終わらせず、中田健太郎さんが経営するAll Books Consideredで実際に使っていただける環境を整えていきます。店頭で本と出会う日々の中で、さまざまな方の感想や「刺さった一行」が自然に集まっていくような場をつくっていきたいと考えています。
yomiyomiとしても、「思い出」というテーマを軸に、自分の大好きなクリエイターとのコラボレーションをもっともっと仕掛けていけるようにがんばります!
