• イベントレポート

弟の文字が、誰かの日常になる。「良い欠けた魅力」──ナナナナ祭2026を終えて

「SAFEID」は、知的障害者のための服づくりを起点に、彼らの生活の選択肢を広げることを目指すプロジェクトです。これまで、汚れがオシャレになるつけ襟の制作や、障害の有無で分けることなくアート展示やマーケットを楽しめるイベントの開催など、様々な活動を続けてきました。

今回のナナナナ祭2026では、知的障害のある弟の文字やドローイングを再編集したファッションブランド「Good Broken Charm」を体感できるブース展示を実施。来場者がシルクスクリーンで弟の文字を思い思いにプリントした様子を、SAFEIDの加藤海凪が振り返ります。

はじめに

ナナナナ祭にお越しくださった皆さん、本当にありがとうございました。今までご購入いただいた方や、SNSでみたことがあって気になっている!という方にも読んでいただけたら嬉しいです。

この100BANCHという場所で、GoodBrokenCharmというブランドを始めました。GoodBrokenCharmは、良い欠けた魅力、という意味で、知的障害のある弟の文字や言葉のセンスを服にしていくというブランドです。一般的な障害者アートという文脈ではなく、弟という一人のちゃらんぽらんな面白い人間と一緒に、試行錯誤しながら、いろんなアイテムを作っています。

今回のナナナナ祭では、弟が英語で書いた「思いやり」の文字を靴下にプリントするワークショップを開催しました。 「知的障害があるから」ということではなく、なんとなく味のある文字や「思いやり」という言葉が、じわじわと心に染み込んでいくような時間を過ごしていただけたらと思い、この企画を実施しました。 

 

どうしてこのブランドを始めたのか

ナナナナ祭のレポートに入る前に、まず、なぜこのブランドを始めたのか、その想いを話します。

今まで、弟が知的障害があることで、コンプレックスを持ったことはありません。むしろ、彼に憧れています。

よく、思ったことを言葉にできなくて、それっぽいことを口にしてしまったり、空気を読んで周りに合わせてしまったり、自分が考えていることは、正しいのか、間違っているのかを考えてしまったりと、迷うことがたくさんあります。確かに何かを思っているし、考えているけれど、それがなんなのか、知識も言葉もたくわえているはずなのに、昔よりわからなくなっています。

だから、何かを思ったり、感じたりしても、そのキラキラした感情のかけらを通り過ぎてしまうことがあります。無意識にダサいことを恐れ、間違っていることを避け、矛盾のないように気にして過ごしてしまいます。

大事なことが見えなくなって、自分の気持ちや感覚に、どんどん靄がかかっていって、本当は無視したらいけない正直な自分を、遠くから冷笑しています。

でも弟は逆で、これを言ったら良さそうとか、これを言ったらウケそうとか、そんなのはお構いなしに、言葉をフルスロットルで発していて、それでみんなが笑っていたら、「なんか僕、いいこと言ったな」って感じのドヤ顔をしています。

ちなみに、ナナナナ祭に来たときには、「100年後の未来どうありたいか」という短冊に、「今のうちにやる」と書いていました(笑)

見たものや感じたことが、そのまま弟の言葉で出てきて、たとえその言葉の意味や使い方が間違っていても、矛盾していても、弟の感じたことや思ったことは伝わってきます。弟を見ていると、たとえ自分の行動や普段のスタンスとは矛盾していても、その矛盾を受け入れて、感じたことを思った通りに描ける人でありたいな、という気づきをくれます。

だから、弟の文字やセンスを「良い欠けた魅力」として発信したり、それをプロダクトとして社会に広めていけば、もっと平和で面白くて、正直で素直になれる瞬間が生み出せるのではないかと思っています。

 

ナナナナ祭3回出たけど今までで一番いい感じだった

ナナナナ祭では、たくさんの方に「思いやり大事ソックス」のシルクスクリーン体験をしていただきました。お越しくださった皆さん、本当にありがとうございます。

「SNSで見てきました!」「記事を見て、知りました」という方が多くいて、「実際に来てくれるなんて、嬉しい!!!」と純粋に感動しました。

弟の文字について、「味があっていいですね」「普通に可愛いからめっちゃ履きます!」と言ってくれる方が多くいて、弟も喜んでいました。

「障害者アートっぽくなくていい!」「障害とか関係ないですね、純粋に好きです!」と言ってくれる方や作った靴下を動画にしてSNSに投稿してくれる方もいて、弟のセンスや感覚が少しずつ伝わっていく瞬間を実感できました。

中には、中学生のお客さんもいて、「最近ファッションに興味が出始めて、このブランドを知って、来ました。」と言ってくれました。自分も中学生の頃からファッションに興味を持ち始めて、色々調べてポップアップに行ったりしていたので、その矢印が弟が書いたデザインに向いていることが本当に嬉しくて感激しました。

今まで2回ナナナナ祭に参加したのですが、3回目にして一番たくさんの方に体験していただくことができました。前は、「周りの人(他のブース)より良い体験を提供できているのか」「もっと良いものを作れたんじゃないか」と後悔することがたくさんありましたが、今回は自信を持って良いものを提供できていると実感することができました。

ヤグラ企画では、ゆるりと弟と人生相談会をしました。これから、「トークの向こう側」という人生相談に答えるポッドキャストを始めよう!と弟と企画していて、その元になるようなトークショーを開催しました。

好きなことを好きなタイミングでやればいい、頑張りたくない時は頑張らなくていい、という弟のスタンスが垣間見えて、とても面白かったです。

これからポッドキャストも発信していくので、SNSをチェックしていただけたら嬉しいです。GoodBrokenCharm のインスタ

また、同じくナナナナ祭に出展していた、yomiyomiのれなちゃんが紹介してくれたアーティストの方が購入してくださり、なんとフジロックで靴下を履いて演奏してくださいました。

両親の影響で、小さい頃から家族全員でフジロックに参戦していて、今まで見てきた大好きな風景の中に弟と私が作ったものがあるということが嬉しすぎて、家族みんなで感動していました。弟が表現したものを履いて、自分の表現を乗せてくれる、そんな素敵なことがあって良いんですか!って興奮して感動して、曲も素晴らしくよくて、演奏を聴いているとき涙が止まりませんでした(笑)

他にも、アーティストの方がシルクスクリーン体験をしにきてくださったり、同じ音楽が好きな人が体験してくださったりと、今まで私たちが触れてきたカルチャーの一部に弟の文字がなってきているかもしれないと思えて、本当に感激しました。

弟が見せ物になることなく、ただ可愛いから純粋に好きになってくれる、それが体現できた3日間でした。

 

最後に

お越しくださった皆さん、本当にありがとうございました!!!

いつも気にかけてくださる100BANCHのスタッフのみなさんも本当にありがとうございます!

来月の売り上げも予想できないポンコツですが、今回のナナナナ祭で、小さい頃から妄想していた自分の未来や、弟の未来、平和で面白くて素直な未来が本当に来るのではないかと確かに思うことができました。

この日の出会いや、感じたことをこれからも大切にしていきます。

「21ちゃいパンピー大学生」と、ちゃらんぽらんの弟がこれからも新しいものを生み出して、明るい未来を作っていくので、駆け出しのブランドですが、末長く見守っていただけると幸いです。

家族写真ー右のベトナム兵が弟

 

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