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褌(ふんどし)を締め直せ!身体をよく保ち、楽しくドラマチックに生きる:星野雄三(株式会社バディトレ 代表取締役)

「身体を突き合わせて、人との熱狂を生み出したい。」

テクノロジーが加速し、あらゆる体験が効率化されるAI時代。あえて「ふんどし」や「筋トレ」という泥臭い身体性に、代替不可能な「祝祭性」を見いだす――。その体験から、星野雄三の問いへの挑戦ははじまりました。

星野は、2017年7月にGARAGE Program1期「FHP〜Fundoshi Hack Project〜」として100BANCHに入居。日本の伝統的肌着である「ふんどし」に着目し、ふんどしを世界に発信するファッションショーを開催しました。その後「世界から孤独をなくす」というコンセプトのもと、3〜4人グループでエクササイズに取り組むセミパーソナルジムを立ち上げ、体づくりとともにより良い人間関係づくりを進めるソーシャルフィットネスの取り組みに力を入れています。

そんな星野が、現在の活動や100BANCHへの想いを語りました。

星野雄三|株式会社バディトレ 代表取締役

東京大学大学院総合文化研究科(筋生理学修士)卒業後に超音波剪断波エラストグラフィによるスタティックストレッチングの急性効果が評価される。 大学院時代から研究とトレーニング指導を10年以上従事。その間、研究と実践を活かし、ダイエットからスポーツ指導まで多岐にわたる指導を3,000人以上をサポート。 プロアスリート・パラリンピアン・医者やトレーナー・アイドルなど、多種多様なクライエントに最先端のトレーニングメソッドを提供し、好評を得ている。某有名アイドルや著名人のトレーナーとして、Yahoo!、楽天、Teamlab、weworkなどのベンチャー企業との実績も多数あり。ふんどしのアパレルブランド「ふんどし部」も手がける。

星野:僕は筋トレ事業をやっていて、体はめっぽう若いはずなのですが、先日なぜか白内障になってしまい、ほとんど目が見えなくなりました。このように、事業をやっていると予想もしなかったような様々なハードシングスがあります。今日は、皆さんにもそれを乗り越えてほしいという想いで話します。

100BANCH入居当時、僕は「パンツを撲滅する」と言って、ふんどしプロジェクトをはじめました。極めてイノベーティブですよね。でも、イノベーティブとは「ただ単に、誰も言っていないことを言えばいい」というものではないことも伝えたいです。僕はGARAGE Programの1期目として入居したので、ここ100BANCHが何なのか、スペースをどう使えるのか、メンターと何ができるのか、何もわからないまま踏み出しました。結論から言えば、得るものは非常に大きかったです。

イノベーティブなことに挑戦するとき、多くは何もわからないまま始めるしかありません。8〜9年前の話ですが、どんな出会いがあったのか、100BANCHへの感謝とともにお伝えします。

 

周囲を巻き込む「極めて異常な執着」

—— 当時の星野は「ふんどし」という日本最古の下着を武器に世界を舞台にして戦っていました。突破口となったのは、周囲を巻き込み続けた驚異的なパッションだったといいます。

星野:当時は、ふんどし姿を海外に向けて発信し、「日本のビジネスシーンではこうなんです」とめちゃくちゃな嘘をつきながら売っていました。外国人から「そんなわけないだろ」と突っ込まれつつです(笑)。2018年の「サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)」にも出展し、「日本人は祝祭性を示すため、渋谷のスクランブル交差点でも9割がふんどしを履いている。いまパンツを履いているのは重大な損失だ」と英語でプレゼンしました。

星野:当時メンターだった落合陽一さんがファッションショーに動画を寄せてくださったこともあります。秘書の方を通じて、「会ってください」とお願いし続け、ようやく時間をいただけるような方でした。仲間を巻き込み、先輩を巻き込み、外部の人を巻き込む。極めて異常な執着を持たないと、あの時間はつくれなかったと思います。「コンピューテーショナルふんどし」といってどうやってふんどしにデバイスを組み込むかという荒唐無稽な話もしましたが、互いのパッションで成立していました。

 

祝祭性と身体性:AI時代に「気合」を売る理由

—— 星野がふんどしを通じて表現しようとしていたもの。それは、どれだけテクノロジーが進歩しても代替できない「祝祭性」や「人との熱狂」だと話します。

星野:我々の会社は3つのプロジェクトをやっていて、そのうちの1つがファッションです。その中でふんどしで表現したかったのは何かというと「フェスティビティ(祝祭性)」、つまりは「気合」「決意の証し」なんです。自分をさらけ出す行為を通して生まれる熱狂。これはAIが進めば進むほど、「身体」という構造の限界、そして身体を合わせるからこその「祝祭性」からは逃れられないなと思っています。

先ほど紹介したサウス・バイ・サウスウエストやSlush Tokyoでの展示が約9年前で、当時「AI」という言葉も出ていないような頃でした。その中で「ふんどしAIです」と言い切って自分たちがふんどし姿でアンドロイドのように振る舞うという展示をしました。外国人に「本当にロボなんじゃないか!」と触ってもらって人間でしたね、というすごくしょうもないインタラクションではあったのですが、これはアートとしても認められたし、まったくテクノロジーなど用いていなかったのですがテックとしても認められたという奇妙な現象でした。

どれだけテクノロジーが進んでも、人との熱狂や祝祭という行為はほぼなくなりません。例えば、ITベンチャーの人たちが夏に徳島で阿波踊りを踊る行事があるのですが、そこには「Zoomでよくね?」「AIでよくね?」なんて議論は微塵も起きません。その体と体を突き合わせてぶつける身体性が、かつては「ふんどし」であり、現在の僕の活動内容である「バディトレ!」というトレーニング事業で表現していることです。

 

パンツを売るな、生き様を売れ

星野:今日、伝えたいのは「パンツを売るな、生き様を売れ」ということです。プロジェクトをどうやってはじめるのかと言えば、最初は誰もよくわかりません。僕らも、いきなり「ふんどし男」として現れてファッションショーをやると言って、当時IT社長が寄付してくださったり、落合陽一さんも時間をつくってくださったり、ファッションショーに「楽しんご」さんが来てくれたり、「ふんどし脱ぎ方」コンテストをやったら、多くのビジネスマンがふんどしを脱ぐことに熱狂したこともありました。

星野:説教じみたことを言うつもりはないのですが、皆さん、何かしらのプロダクトをつくって売るために、どう世界を変えるのか、どう社会課題を解決するのか、といったことを表明することもあると思いますが、我々「ふんどし部」は社会課題を解決したことなんて1回もありません。なぜなら世の中の人々はみんなパンツで事足りてるからです。だからただ、ふんどしを通して、どうやって世界を楽しくするかというワクワク感でやってきました。我々がファッションショーを開催するにあたって、誰のためにもならない、1円も得しないはずなのに、200万円も集まったことにはすごく興奮しました。

僕自身はデザイナーでもないし、和服にも詳しくないのですが、多くのデザイナーやエンジニア、事務をやってくれる方など、50人ほどのチームメンバーが集まってプロジェクトをつくり上げていきました。今、極めて合理的に動くならばAI+2~3人でもできると思うのですが、100BANCHに関わるのならば、ぜひ一度、自分たちの商品やサービス、イベントに数十人を集めて巻き込めるようなプロダクトをつくってほしいなと願っています。AIでも服でも食でもいいのですが、みんなを楽しく巻き込めることが、この100BANCHでやる意味かなと思っています。

 

概念を売るな、プロダクトを売れ

—— 「生き様を売れ」と説く星野ですが、一転して、事業を継続させるための冷静な視点についても話します。

星野:プロジェクトを行うにあたって、最近は極めて合理的になってきている人が多く、皆さん小利口になりがちだと感じています。僕は東京大学を出て、いきなり「ふんどし」で起業したのですが、正直あまり稼げませんでした。でも、プロジェクトとしてはかなりワクワクするようなプロダクト、商材でした。それを踏まえた上で、僕はひたすら祭りとフェスティビティのことを話していました。「ふんどし脱ぎ方コンテスト」も、ある意味おバカで大事な祭りですし、まったく見たことのないふんどしの美しいファッションショーをするというのも、僕にとってのお祭り、フェスティビティでした。そこを大事にしながらも、冗談かと思うぐらい本気でプロダクトもつくり込みました。

星野:プロジェクトを立ち上げるときには、必ず熱狂が必要で、必ず生き様を売らなくてはいけません。ですが、生き様を売った後、ずっと概念だけを売っていると、実は人をひきつけ続けることができない、というのは極めて教科書的じゃないというか、驚くべきことだなと最近思っています。

僕が例えとしてよく話すのは「羊羹屋」の話です。「バズる、列に並ぶ、みんながおいしいと思う羊羹屋をつくりたい。」ということをひたすら言ったとしても別にバズらないし、羊羹屋に列はできません。羊羹屋として僕たちがやるべきことは、羊羹の素材にこだわることだし、羊羹の味を探求することだし、お客様にひたすら羊羹の魅力を伝えることです。プロジェクトのコアとしてやらなくてはいけないのは、徹底的に商材を磨くことなんです。100BANCHでは「ハレ」と「ケ」という言い方をしますが、徹底的に「ケ」を磨き込むからこそ、最高の「ハレ」を迎えることができます。もし、皆さんがプロジェクトで、「最初はみんなを巻き込めたけれど、なんだかプロジェクトが進まなくなってきたな」と思うことがあれば、僕は「プロダクトを磨け」と言うし、数人でこじんまりとやっているとしたら、「もっと生き様を売れよ」とアドバイスすると思います。

 

努力を裏切らない「バディトレ!」への挑戦

星野:僕は東京大学で筋生理学という筋肉の研究をしていました。筋トレに関して「脳筋」なんていう言葉がありますが、実は逆で、筋トレほど科学的でやったことが成果に出る分野はありません。努力したことは必ず報われます。ただ、筋トレですごく難しいのは、継続することです。筋トレにおいて努力を継続できる確率は1年でわずか3.7%と言われています。96%が離脱するという、残酷な統計となっています。30代から40代ぐらいになると「太ってきた、痩せたいな」「疲れやすくなってきたな」と言う人が増えてきます。にもかかわらず、時間がない、辛い、高い、遠いなど、ありとあらゆるジムに行かない理由を僕たちは突きつけられています。といいつつも、皆さん3ヶ月前に予約していたレストランに行ったり、友達の結婚式にわざわざ飛行機に乗って行ったり、デートに推し活、と時間や手間をひたすらかけているんです。その中で「フィットネス体験」をどうやったら特別なことにできるのかが僕たちの課題でした。

そこで、我々「バディトレ!」では、1回45分のワークアウトで熱気を生み出すことをやっています。フィットネスは、1人で黙々とつまらないことをやるのが既存の体験なのですが、みんなとパッと会って、心拍数を可視化して、今日頑張ったねと言って、ちょっと1杯乾杯する。といったことをクイックにやっています。皆さん飲み会だと3〜5時間くらいはやっているわけですが、45分に凝縮すれば、人は週2、3回飲み会に行くような気持ちでフィットネスできるのではないかと。この考えをもとに、「バディトレ!」はパーソナルジムという形でコーチング、短時間で終わるHIITトレーニング、そしてコミュニティづくりをひたすらにおこなっています。

 

未来を彩らせる「しつこさ」を

星野:100BANCHに応募した方、今いる皆さん、飽きずに続けてください。AIが活用されるようになり、人間としての価値は、やはりひたすら「生き様」というか「熱狂」を売るということだと思っています。どのようなプロダクト、サービスでもいいので、それによって「こんなふうに世界を彩らせるんだ」という点をとにかくしつこく言うべきだなと思うし、ぶれずに言い続けてほしいなと思っています。

と言いつつ、それは「ハレ」の日の話であって、「ケ」の日には、ひたすらプロダクトを磨いてください。羊羹屋なら羊羹を、アパレルなら服のクオリティを。これをひたすら練り込まないと、顧客と仲間はグリップできないということを僕はふんどしと「バディトレ!」という事業ですごく感じています。

 

今回のお話の内容は、YouTubeでもご覧いただけます。

https://youtu.be/RMVHDy2h5Rc?si=9VU0HOMoy9aFutdB

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