• イベントレポート

『縁起が悪い!』と言いながら、たくさん生きる話をした。——「めちゃくちゃ縁起が悪いスナック」

Sadamaranai Obake(さだまらないオバケ)は、デザインの力で「死」に対するネガティブなイメージやタブー意識をやわらかくほぐし、「死のリデザイン(再定義)」を目指すプロジェクトです。これまで、死生観について対話ができるイベントやプロダクト開発など、様々な実験に取り組んできました。

今回、2026年のはじまりに彼女たちが挑んだ実験は「めちゃくちゃ縁起の悪いスナック」。病気や死の話をすると、なぜ「縁起でもない」と言われるのか?それなら最初から「縁起が悪い」と言ってしまえば意外と気軽に話せるのかも。そんな考えから、2026年1月24日(土)に100BANCHにて開催したイベントの模様を、さだまらないオバケの趙がレポートします。

私たち「さだまらないオバケ」は、死にまつわるネガティブな価値観を、デザインの力で捉え直す活動をしているユニットです。

グリーフケアをテーマにしたプロダクトや、お酒を片手に死生観を話すイベント「デス・スナック」などを通して、死を「さだまらない」ものとして捉え、誰もが自分の死生観を自由に話せる文化の醸成を目指しています。

そして今回2026年一発目に開催したのが、「めちゃくちゃ縁起が悪いスナック」というイベントでした。

 

なぜ「縁起が悪い」なのか

福祉・医療の現場では、「尊厳ある最期」を望む声が多く聞かれます。一方で、その考えや実践が、なかなか社会全体には広がっていかない。さだまらないオバケも、ACP/ALPといった福祉領域への挑戦を進める中で、その実情を強く感じていました。

100BANCHで出会った人生想帖さんや、理学療法士の横田達之さんとの対話を重ねる中で、見えてきたのは、若い世代に向けたACP/ALPや死生観の言葉、入口が、ほとんど用意されていないという課題でした。

ACPはプロセスの名前ですが、その根っこにあるのは、「自分はどう生きたいのか」「何を大切にして生きたいのか」という感覚だと思っています。それは本来、高齢者や終末期の人だけのものではなく、もっと早いタイミングで、もっと日常の中で語られていいはずのものです。それにもかかわらず、現状では、人生の終盤に考えるものとして、どこか遠い存在になってしまっている。

そこで今回は、「正しさ」や「啓発」だけではなく、文化や遊びの文脈から死生観に触れる入口をつくれないかと考え、あえて「縁起が悪い」という言葉を前面に出すことにしました。重そうなテーマだからこそ、少し笑えて、少し拍子抜けするくらいの入口のほうが、実は話し始めやすいのではないか。そんな仮説から生まれた実験でした。

※ACP(アドバンス・ケア・プランニング):“もしものとき”に自分がどんな医療やケアを望むかを、家族や医療者と話し合い、共有しておくプロセス
※ALP(アフター・ライフ・プランニング):ACPの前段階で、健康な段階から“自分は何を大切にしているか”“どんな人生を歩みたいか”を考えるプロセス

 

めちゃくちゃ縁起の悪い仕掛けたち

今回のイベントでは、「縁起が悪い」を単なるキャッチコピーにするのではなく、自然と考え始め、話してしまうための仕掛けをいくつも用意しました。どれも正解を出すためのものではなく、自分の感覚に立ち止まるための、小さな入口です。

47WAZA KICKSさんに制作いただいた、めちゃくちゃ縁起が悪そうで、でもどこか愛嬌のある猫も登場しました。

 

①めちゃくちゃ縁起の悪いおみくじ

会場に置かれていたのは、全て大凶の「めちゃくちゃ縁起の悪いおみくじ」

引いて終わりではなく、そこに書かれているのは、「今の自分に向けた問い」や「少し先の人生を想像する言葉」。縁起が悪いはずなのに、なぜか会話のきっかけになる。そんな不思議な役割を、このおみくじは担っていました。

全て大凶なので、もちろんみんな、結んで帰ります。

 

②めちゃくちゃ縁起の悪い二択投票

AかBか、究極だけど日常にもつながる2択をいくつか並べました。

「もしものとき、自分はどちらを選ぶ?」
正解も不正解もありません。 迷ってもいいし、選びきれなくてもいい。選ぶという行為そのものが、ほんの少し人生を考えるきっかけになる。そんな体験を目指した投票です。

究極の2択!このお題の決定は運営スタッフを悩ませました…!

 

③ワークショップ「92歳で死ぬとしたら」

この夜の中でも、特にメインとなったのが、「もし92歳で死ぬとしたら?」というワークショップでした。ACP Lab.の横田達之さんにご登壇いただき、参加者それぞれが、自分の人生を少し先から眺めてみる時間をつくりました。

重くなりすぎない絶妙な距離感の中で、参加者それぞれの言葉が、静かに、そして確かに生まれていました。

全員参加のワークショップは、大盛況でした!横田さんありがとうございました!

 

④人生最後のひと缶

 飲み物にも小さな仕掛けを忍ばせていました。手に取った缶には、ランダムで死生観を考えさせるお題が書かれており、参加者は奥に設置したホワイトボードに、それぞれの答えを書いて貼っていきます。とりあえずの一杯が、ふと立ち止まり、周りの人と話し始めるきっかけになる。お酒を片手に、ゆるやかに言葉を交わし始めるための装置でした。

とりあえず、生(セイ)!?

 

⑤デス・スナック

さだまらないオバケの恒例企画「デススナック」も実施しました。お酒を片手に、正解のない死生観の話を、ゆるやかに交わす時間です。

缶に書いたお題を通してしっぽり話し合います。

 

アンケートから見えたこと

イベント後に実施したアンケートでは、参加者の多くが20〜30代で、医療・福祉分野に直接関わりのない方が半数以上を占めていました。「『縁起が悪い』という前置きがあったことで、病気・老い・死について話してもよいと感じたか」という問いに対しては、多くの参加者が肯定的に回答しています。

また、「縁起が悪いかもしれないが、人生にとって重要なことを扱っていると感じたか」という問いに対しても、ほとんどの参加者が「ポジティブな影響があった」「考えるきっかけになった」と答えてくれました。

 

次回も参加したいが100%! とても嬉しい…!!><

自由記述では、「思っていたより重くなかった」「構えずに話せたのがよかった」「死の話なのに、前向きな気持ちになった」といった声が多く見られました。“縁起が悪い”という言葉が、遠ざけるためのラベルではなく、話し始めるための合図として機能していたことが、アンケートからも読み取れました。

 

最後に

今回、 一見すると人を選びそうなテーマにもかかわらず、当日は40名もの方が申し込み、参加してくれました。そして「めちゃくちゃ縁起が悪い」と言いながら始まったこの夜は、いつの間にか、それぞれの人生の話が静かに行き交う時間になっていました。私たちさだまらないオバケは、医療や福祉の専門家ではありません。けれど、ソーシャルデザインを軸に、デザインや場づくり、企画を通して、死生観やACP/ALPといったテーマに触れるための入口をつくることはできると感じています。

生きるために、死を考える。
そのことを、もう少し日常の中で話せる社会へ。

この小さな実験が、誰かにとって、考え始めるきっかけになっていたら嬉しいです。

ご参加いただいた皆さんをはじめ、今回コラボいただいた人生想帖さんや、横田達之さん、そしてオバケのメンバー、みんなに感謝です!ありがとうございました。

 

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