• イベントレポート

宇宙基地での地球人を通して「貼る青い膜」が問いかけたこと「宇宙基地生活に向けたバイオシールド」──ナナナナ祭2025を終えて

今より宇宙が身近になった未来。「Bio-shield」はそんな未来にむけて、人々の身体を紫外線や宇宙放射線から守るバイオシールドの実現を目指すプロジェクトです。
ナナナナ祭2025では、実際に次世代の環境適応素材バイオシールドを腕や顔に貼り付けてもらうなど、宇宙基地での生活を想定した機能性と美しさを融合させたデザインを多くの方に体験してもらいました。展示の企画背景と当日の様子を、Bio-shieldの山本がレポートします。

展示内容とその意図

今回のナナナナ祭では、「宇宙基地」を模した空間にて、バイオシールドを纏ったトルソーの展示と、来場者が実際に貼るバイオシールドを体験できるプログラムを行いました。さらに、私が創作した青にまつわる詩と映像作品を上映し、来場者一人ひとりにとっての“青”とは何かを考える問いを投げかけました。

この企画の根底には、私自身の創作の原動力である「青」という色への強い思いがあります。地上生活で私たちは常に青に囲まれており、地球は宇宙から見ると「青い星」でもあります。そんな地球から遠く離れた宇宙で暮らす地球出身の人は青=「恋しい色」に変化するのではないかと考えたのです。その象徴性を軸に、バイオシールドで自然の機能をまとう未来の防護膜としての世界観を提示したいと考えました。

展示の工夫と挑戦

空間演出では、スプレーで大胆に天の川銀河を背景に描き出し、宇宙的スケールを視覚化。直前には、HIZUMIチームがAIが生成したワンピース型紙を作ってくださり、それを山形で出会ったシルクで仕立てるという挑戦にも取り組みました。Science Fiction Clubの稲田くんにも縫い方を教わりました。シルクを用いたのは、紫外線吸収効果かつ宇宙素材として注目されているためです。また、編み物初心者ながらもバイオシールド素材で作った繊維からベストを製作し、トルソーに着せました。バイオシールド以外にワンピースやベストを作ったのは、人類が今まで築いた文化的な営みが衣服には詰まっていると考えたためです。それは宇宙基地生活でも忘れてはいけないことだと信じています。

素材面では、アルギン酸ナトリウム+フィコシアニン+塩化カルシウムスプレーによる膜化手法を応用。熱をかけずに形成でき、来場者が実際に「貼る」体験が可能になりました。他のプロジェクトメンバーや事務局のみなさんも貼って接客をしてくださり、とても嬉しかったです。

物販では、紫外線に対する意識向上に繋げるために、紫外線が当たると色がつく蓄光ビーズを用いたブレスレットを作りました。実は、トルソーに着せていたベストにもこのビーズを使っていました。見えない光を可視化することで今はジェンダーによって偏りのある日焼け止めの使用率も是正されるのではないかと考えているためです。これらはきっと、宇宙基地での紫外線放射線防御にも自ずと繋がっていくと考えています。

 

お客さんの反応と気づき

来場者からは、バイオシールドに対して「これは宇宙よりも地球でまず役立つ」という意見が多くありました。また、研究面で「どの波長に対応するのかを絞った方がいい」など、現時点での科学的な課題としての指摘をいただきました。オーロラ観測を趣味とする来場者は、太陽光線のリアルタイム強度を測れるサイトを紹介してくださり、知見の広がりにもつながりました。

印象的だったのは、「全く理解されないかもしれない」と不安だった展示が、多くの人に共感され、面白いという評価を得たことでした。

 

今後の展望とつながり

今年の1月、私の Bio-shildというプロジェクトが始まりました。それまでも多くの繋がりがあって、100BANCHという場所に辿り着き、ナナナナ祭という舞台に立つことができました。すでに、いただいたアドバイスから思いついたアイデアをより形にしていくために動いており、作家としての展示も続けたいと考えています。技術的に素材開発を進めるために、日々勉強も積み重ね研究開発に取り組んでいきます。Bio-shieldプロジェクトを軸に好奇心のままに世界を飛び回ります。

何よりも、目の前にある出会い一つひとつを丁寧に受け取りながら、次のフェーズへとステップアップしていきたいです。

本展示を通じて、「Bio-shield」というプロジェクトに関心を寄せてくださった皆さまに、心より御礼申し上げます。

また、展示の実現にあたり多方面からご協力いただいた事務局の方々、制作や技術支援に関わってくださった関係者の皆さま、そして日頃から活動を支えてくれている家族・友人・仲間たちにも、この場を借りて深く感謝申し上げます。

今後も、いただいたご意見や出会いから得た学びを糧に、より実践的かつ持続可能なかたちでプロジェクトを発展させてまいります。

そして、未来の宇宙生活、そして地球上の暮らしのあり方に貢献できるよう、引き続き研究と創作に取り組んでいきます。

よろしくお願いします。

山本若菜

 

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