
違和感預かり所
「TOIMOCHI」は日常の些細な違和感を問いに変え、考えることの面白さを再発見する「全人類問い持ちプロジェクト」です。目的や社会的意義に縛られず、純粋に問いを面白がることを大事にしています。
そんなTOIMOCHIはナナナナ祭2025にて、「違和感預かり所」をオープン。これまでTOIMOCHIが預かってきた皆さんの「違和感」を「問い」として楽しんでもらえる体験ブースをつくりました。
考えるって、自由で、くだらなくて、でもなんか楽しい。そんな再発見をしてもらうことを目指した当日の模様を、TOIMOCHIの岸が振り返ります。
「問う=社会貢献のため」
「問う=新しいイノベーションを生むため」
「問う=不確実な世の中を生き抜く、主体的な自己を確立するため」
???
きっとそのどれも必要だけれど、そればっかりになりすぎていないだろうか?
「問い」が道具になりつつある現代において、私たち「全人類問い持ちプロジェクト」はあえて、「問いたがる身体感覚」そのものに焦点を当てます。
「問う=社会を変える前にまず、自分の心を満たすものである」
と再定義し、日常の些細な違和感から「問い」がふ、と立ち上がってくる感覚を楽しめる空間や仕掛けを日々作っています。
が!そもそも「違和感…違和感..?思い出せない….」という声をよく聞きます。「違和感」は怒りや不安、あるいは喜びほど強い感情でないため記憶にとどまりづらく、気づかぬ間にどこかへ消えてしまいます。
では、忘れてしまっても後から面白がれるように、一時保留できる場所があればどうだろう?今回のナナナナ祭では、違和感を「預かる」装置を作りました。その名も「違和感預かり所」!
ナナナナ祭の準備として、まずは試しに簡易版預かり所(自転車)を作り、渋谷の街で違和感を集めてみました。そこで気づいたのは「違和感ありますか?」と尋ねても「違和感…?何かあったかな…」という反応が大半だということです。
その原因は「違和感」という言葉が抽象的で、具体的な経験や身体感覚と結びつけづらいからだと思います。多くの人にとって「違和感」とは、「え〜〜うわ〜〜〜なんだかうまく言えないけれど…うわ…」というような、ちょっとしたひっかかりであり、言葉として整理される以前の感覚なのだと思います。
「違和感教えてください」という投げかけ自体が、記憶をたどる手がかりとしては弱く、もう少し身体や感覚に根ざした問いかけが良さそうだと気づきました。
そこで「違和感」ではなく「エ!モーメント」という表現に変え、日常で感じる「エ!」な瞬間を集めることにしました。「エ!」以外にも「エ?」「エッ」「エエエーっ」なモーメントも大歓迎です。
「違和感預かり所」では、日常の「エ!」な瞬間を預かります。誰かが「エ!」と思ったら、預かり所に「もしもーし」と電話をかけてくる、という設定のブースです。
来場者は「違和感預かり員」として、電話をかけてきた人が「なぜそれをエ!と思ったのか」を聴くお仕事をしてもらいます。
電話が切れたら、誰かの「エ!モーメント」に対するお返事をマイクに吹き込み、お仕事は完了です。
「うんうん」「え〜!」「たしかに」と相槌をうちながら電話を聴いている人が多く、他者の「エ!モーメント」を預かるという行為を通して、自分の中にも似たような「エ!」があることに気づいたり、思いもよらない感覚に引っかかって新しい問いが立ち上がってくるような、そんな連鎖が生まれていました。
最後に、来場者自身の「エ!モーメント」を預ける番。するとその「エ!モーメント」が録音され、次の来場者のもとに電話として届けられます。こうして、誰かの違和感が、見知らぬ誰かの耳に届き、また別の誰かへと受け渡されていく──そんな違和感の循環がこの空間には流れていました。
誰かからのお返事は、「エ!モーメント」を預けた人に届けられます。
「エ!モーメント」のリプレイページ👇
https://branch-throat-813.notion.site/2025-22df58c9480180288a03ecd939f90811?pvs=143
ぜひ、3日間で生まれた「エ!モーメント」の循環を覗いてみてくださいね。
3日間で、合計63個の「エ!モーメント」を預かりました。
「これ、共感してもらえたら嬉しいな」「んー、共感してもらえるものが思いつかないな」という声が多く聞かれました。
けれど私たちが大切にしているのは、「共感」よりもむしろ「わからなさ」がもたらす可能性です。
わからない、という感覚は、自分と他者のあいだにある見えない境界線を浮かび上がらせます。そしてその境界線に目を凝らすとき、自分の中にある問いがゆっくりと姿を現してきます。わからないからこそ、問いたくなる。そんな場のあり方を目指しています。
今回のナナナナ祭では「共感する/される」に焦点が当てられがちだったので、今後は「分かり合えない」感覚を持つことが許される体験デザインを考えてみたいと思います!
ありとあらゆる人の、「エ!」なモーメントを聴くこと、どうしてそれを「エ!」と思ったのか、その時どんな身体感覚だったのか、その語りを聴くこと、あ〜〜、とても面白い!
「私たち全人類問い持ちプロジェクトがあなたの生活に入り込むとしたらどういう形?」という質問に、こんなふうに答えてくれた方がいました。
『お祭りの屋台でいうと、タコライスみたいな、たまに見つけられる「なんかいる!」みたいな存在でいてほしいです。新鮮みとか刺激がある感じが好奇心そそられるからです。』
私たち全人類問い持ちプロジェクト、お祭り屋台のタコライスを目指して、ありとあらゆるところに「違和感預かり所」を出現させたいと思っています!
ナナナナ祭2025終了後、早速とあるイベントにて違和感預かり所ブースを出現させました。
商店街のちょっとしたイベント、フリマ、フェス、なんならポツンと道端でも、色々な場所で「エ!モーメント」の循環を生み出したい!
なんだか面白いことやってるな、とぜひ応援・お声がけいただけたら嬉しいです♩
多くの方に「ブースが素敵!」と言っていただけたことがとても嬉しかったです。
実はナナナナ祭の3日前まで、納得のいく体験の流れを決め切れておらず「これ、間に合うのか…いや、間に合わせるんだ……」という状況でした(滝汗)。
さらには、ブースは全て自分たちの手で組み立てる計画で、大きな板をノコギリで切り、インパクトでガ—とやる…の、繰り返し…。ナナナナ祭前日はヒイヒイ言いながら作業していました。無事完成させることができてよかった…。
さらにここだけの裏話なのですが、私たちのチームにはエンジニアがおらず、「電話風の演出で録音を流す」「エ!モーメントへのお返事を録音する」という演出を全て手動で行っていました(大汗)。
どの音源をどのパソコンに繋いでいたか分からなくなってはてんやわんやの3日間!それも楽しかったけれど、ぜひエンジニアの方と出会いたいなあ、と強く思うばかりです。