• イベントレポート

独自開発した学校向けの授業を、「授業」と言わずに一般向けに開催した結果。新感覚謎解きアドベンチャー「レイのブログ」─ナナナナ祭2023を終えて

最高に楽しいIT教育を中高生に届けるプロジェクト「Classroom Adventure MOGURA」が、ナナナナ祭2023で取り組んだのは「クラスルームアドベンチャー」。クラスルームアドベンチャーとは、つまらない学校の科目を「脱出ゲーム」のような形式に落とし込み、授業だとは思えないようなエンタメ力で学生たちを魅了する独自開発したイベント方式です。試行錯誤した当日の様子を、Classroom Adventure MOGURAの堀口と古堅がお伝えします。

今回開催した「レイのブログ」はクラスルームアドベンチャーの第一弾であり、情報の科目における「情報リテラシー」や「メディアリテラシー」をテーマとして制作しました。

実際に高知県の中学校で開催した際は、生徒たちからの反応が良く、「一緒にゲームを作りたい」と言ってくれる生徒まで現れました。

これを中高生ではなく、一般人に授業だと言わずに体験を提供したらどうなるのか?

私たちはナナナナ祭を通して、検証をすることにしました。

 

全力で冒険し、全力で遊ぶと気づくことがある

私たちはその場の雰囲気に合わせて、進行の仕方は毎回アドリブです。しかし、今回のイベントでは、唯一ルールを設けました:

「お客さんには、学校向けに開催していることをイベント開始前に言わない」

イベント開始時間になると、かすかなジャズと共に、映画上映前のような注意事項の動画が流れます。「LINE、Google Mapなどのインストールは事前に済ませておきましょう」

参加者の顔はポカンとします。「何を見せられてるんだ?」

すると、学校のチャイムの音が鳴り響きます。

「キーン、コーン、カーン、コーン」

物語の始まりの合図です。

参加者はここから、「レイ」という謎の人物の正体を明かす冒険へと出発します。

そこから、テーブル内で協力しあったり、インターネットを隅々まで探り、与えられた情報をもとに必死で謎を解き明かします。

そして、多くの難関を乗り越え、エンディングに辿り着くと、参加者全員が「レイのブログ」を客観的に振り返ります。

「検索力がないと難しいかもね」「こんな機能があったなんて知らなかった!」

まさに私たちが「レイのブログ」を設計した時に詰め込んだ学びを、参加者は“全力の冒険”と“遊び ”を通して気づいてくれました。

体験終了後、私たちの団体に関する説明と「実は学校で授業として開催していた」ということを参加者全員に伝えました。

すると、体験後のインタビューで「まさか授業だとは思わなかった」「SNSの見る目が変わった」といった声をいただきました。

“全力で冒険し、全力で遊ぶことで得られる発見”

レイのブログを通した探求的学びの効果を実証することができました。

 

求められるコンテンツ力

私たちは今回の実験で、純粋なエンタメとしてレイのブログをお客さんに提供しました。

教育的な要素や、授業の時間を使って開催するといった建前を全て取っ払って、純粋な「面白さ」を売りにしてイベントを行いました。

そこで感じたことは、「会場の熱気が足りない」ということです。

学校のクラスで開催するときは、「何が起きるんだ?」とソワソワとした生徒たちが30名ほど集められて開催されます。そんな中で急にゲームが始まったら、それは面白いに違いありません。そこで、声を大きくして勢いよくファシリテーションをすれば、それなりに教室全体のテンションは上がります。生徒たちは純粋に物語を楽しんでくれます。

しかし、大人は全く違いました。

ちょっとした勢いで大人は動じません。ちょっとしたギミックでも、大人はびっくりしません。ちょっと声をあげたからと言って、部屋のテンションはそう簡単には上がりません。

『レイのブログ』のコンテンツとしての物足りなさを痛感しました。

それと同時に、制作している間に自分が妥協して作り込まなかった部分を思い出させられました。

「これから内容を変えるのは難しいからそのままで行こう」

「なんか違和感あるけど、とりあえずこのまま作ってみよう」

そんな言葉で誤魔化してきた部分が全部見透かされた気持ちがしました。

お客さんの前でこれを「エンタメ」として提供していることに、少し恥ずかしさを覚えたのです。

しかし逆に、自分が「作り切った!」と思った部分は、自信を持って見せることができました。「この絵は頑張ったぞ」、「この演出は流石に驚くだろ!」と思えた部分は、案外お客さんの反応も良かったりするものです。

誤魔化しが効かない環境だったからこそ感じられた、求められる“コンテンツ力”。

どのような環境であっても、自信を持って披露できるモノを作り切る大切さを改めて痛感しました。

 

胸を張って誇れる、唯一無二の体験へ

今回の「レイのブログ」開催にあたって、私たちは「謎解き」や「脱出ゲーム」といった分かりやすい言葉を使って、イベントの紹介、宣伝を行ってきました。

しかし、私たちが本当に提供したいのは、謎解きや脱出ゲームといった部分よりも、学校の中の「クラス」空間で行われる“新しい学び体験”です。

“学び体験”といっても、一方的な講義による退屈な授業ではなく、生徒たちが「これマジで楽しいし、勉強にもなるわ」と感じてもらえるような、“ほぼゲームみたいな授業”を提供したいという思いがありました。

それこそが『クラスルームアドベンチャー』なのです。

クラスルームアドベンチャー(以下:クラアド)は、単純に“面白さ”だけを追求したゲームコンテンツではなく、プレイしてるだけで勝手に学びが身につくような体験設計がされています。

かと言って、あまり説教くさいゲームにしたくなかったので、私たちなりの“面白さ”を日常に溢れるさまざまのコンテンツから吸収して、クラアドを大人がプレイしても楽しめるようなコンテンツに仕上げてきました。

今年の4月に初めて学校で開催してから、ナナナナ祭でのイベントまでを通じて、チームとして確信を持てた部分もあれば、今後改善していかなければならない部分も同時に明確になってきました。

クラアドが唯一無二の「エンタメ×学び体験」であることを、私たちが胸を張って誇るためにも、こうしたイベントを通じて、今後の活動の中でチームができることを常に発見し続ける姿勢が求められます。

SCRAPの『リアル脱出ゲーム』のように、私たちMOGURAは『クラアド』という新しいエンタメのジャンルを開拓し、中高生をはじめとする多くの人々に広めていきたいと強く感じています。

 

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