天気からはじまる、自分だけの一日レシピ

天気が敵ではなく、味方になる社会を目指すプロジェクト「Clouva」。近年、気候変動に伴う異常気象が世界各地で増加し、人々の暮らしにも大きな影響を及ぼすなか、気象情報の新たな捉え方や活用方法を模索しています。
ナナナナ祭2026では、体験展示「天気からはじまる、自分だけの一日レシピ」を実施。天気が思っている以上に気分や行動を左右していることに目を向け、その日の天気に合わせた自分なりの過ごし方を発見する体験を届けました。その模様を、Clouvaの新羅由清がレポートします。
天気予報は毎日見ているのに、私たちは意外と、天気そのものについて話していません。
「今日は暑いですね」「雨が降りそうですね」と言葉を交わすことはあっても、「どんな天気が好きですか」と聞かれる機会は、ほとんどない。いざ聞かれると、多くの人は「晴れ」「曇り」「雨」といった言葉で答えるのではないでしょうか。
私たちは現在、「天気と人の行動をつなぐ」ことをテーマにしたプロジェクトに取り組んでいます。目指しているのは、天気を一方的に受け取る情報から、人が参加できるものへ変えることです。スマートフォンで空の写真を撮り、その日の空気や、したいことを記録する。そうした日常の行動が地域の気象データとして蓄積され、より身近な情報へ変わっていく。利用する人にとっては、その日の過ごし方を考えるきっかけになり、社会にとっては、ローカルな気象データが自然と集まる仕組みになる。そんな循環を構想しています。その最初の実験として、ナナナナ祭で「自分だけの天気レシピをつくる」という展示を行いました。

来場者には、自分が好きな天気の日を思い浮かべながら、六つの問いに答えてもらいました。
「この天気は何色?」
「どんな服を着たい?」
「どんな匂い?」
「どんな音がする?」
「どこで何をしたい?」
「この天気に名前をつけるなら?」
記入後は、回答をもとに自分だけのキーチェーンをつくります。三日間で集まったカードは190枚。会場では、子どもから大人まで、幅広い人がカードを手に取ってくれました。すぐに書き始める人もいれば、目を閉じて好きな天気を思い出す人、家族や友人と相談しながら言葉を探す人もいました。
「天気に名前をつけるなんて初めて」
「こんな体験はしたことがない」
「アプリはいつ出るの?」
そうした反応を直接聞けたことも、今回の展示で得た大きな収穫でした。


展示が終わったあと、集まったカードを読み返してみると、そこには「晴れ」や「雨」だけでは表せない言葉が並んでいました。「眠る人と起きる太陽」「冬はつとめて」「すいかを食べたい天気」「ビルもかわいく見える夕方」「夏休みファーエバー!」
なかでも印象に残ったのが、「洗濯した家服を外に干す時みる空」という名前です。この人が好きなのは、空の色だけではありません。洗濯を終えて、家で着る服を外に干し、ふと空を見上げた時間。その日の風や匂い、生活が穏やかに進んでいる感覚まで含めて、ひとつの「好きな天気」になっています。「コンビニまで夫とおさんぽ、アイスたべる」という回答にも、同じことを感じます。夫と歩くこと、コンビニまでの短い道のり、帰りに食べるアイス。気象現象ではなく、その天気のなかで過ごす生活が記録されています。
人は天気そのものではなく、天気のなかで過ごした時間を覚えているのかもしれません。誰といたか、何をしたか、身体で何を感じたか。そうした記憶をまとめて、私たちは「好きな天気」と呼んでいるように思います。最初から「好きな天気に名前をつけてください」と聞いても、すぐには言葉が出てこなかったと思います。色、服、匂い、音、場所、行動と順番に考え、最後に名前をつける。その体験の流れが、一人ひとりの記憶や感覚を少しずつ引き出しました。同じ雨でも、誰かにとっては「守護雨」になり、別の誰かにとっては「寝付きASMR雨」になる。名前をつけた瞬間、一般的な気象現象が「自分だけの天気」に変わります。天気と行動をつなぐために必要なのは、情報を増やすことだけではない。人が天気を自分の生活と結びつけるための、問いやきっかけをつくることも重要なのだと感じました。


今回の展示は、私にとって、自分で構想したものを形にし、多くの人に届ける初めての挑戦でもありました。会場では、なぜこの体験をつくったのか、どんな未来を目指しているのかを、何度も自分の言葉で説明しました。最初はうまく伝わるか不安でしたが、来場者の反応を見ながら言葉を選び、ときには問いを受け、相手に納得してもらえるまで話しました。「通勤のときに使いたい」「旅行先で役立ちそう」と、自分の生活に置き換えて話してくれる人や、「アプリはいつ出るの?」と期待してくれる人もいました。
自分の思いを口に出し、目の前の人に伝え続けた時間は、このプロジェクトへの自信につながりました。まだ構想段階で、改善すべき点も多くあります。それでも、天気を楽しむ感覚はすでに多くの人のなかにあり、問いをきっかけに表へ出てくる。そのことを、190枚のカードと会場での対話から確かめられました。
この経験を出発点に、人と天気との関係を少しずつつくり直していきたいと思います。