• イベントレポート

和菓子の未来を体験させてみた、考えてみた「和菓子暮らし」──ナナナナ祭2025を終えて

「Wokashication」はデザインの力で和菓子に触れる機会を創出し、和菓子文化の継承と革新を目指すプロジェクトです。これまで、和三盆でできた食べられる箸置き『和三置き』をはじめ、様々な和菓子体験づくりに取り組んできました。
ナナナナ祭2025では、「和菓子暮らし」というテーマの体験ブースをつくり、日々の暮らしの中に和菓子がある未来を来場者と共有することを試みました。その実験を、Wokashicationの清水が振り返ります。

和菓子の未来を体験させてみた、考えてみた

「Wokashication」では、体験要素を取り入れた和菓子のデザイン企画を通じて、現代人と和菓子の距離を縮められるかの研究を行っています。
今回のナナナナ祭2025では、「Wokashication」の外編企画として、今まで制作してきた提案の琥珀糖・和三盆・練り切りを使った体験提案を実際に展示、体験していただきました。研究の枠を超えて、実際の来場者との接点を持つ初めての試みでもありました。

 

和菓子を『飾る』『使う』『作る』『知る』体験

体験展示は3つのブースに分けて実施しました。

①飾る体験 琥珀糖モビール

琥珀糖の製造工程で「机の上に広げて一週間乾燥させる」という工程を、モビールの「吊るす」動作と組み合わせました。飾りながら乾燥でき、最後には食べられるという新しい提案です。
「乾燥工程をデザインする」という発想は机上では面白いと思っていましたが、実際に来場者の反応を見ると、想像以上に「作品として成立している」ことを実感しました。特に、子どもたちが「食べられるのに飾れる」ことに驚く姿が印象的で、和菓子の新しい可能性を感じました。

 

②使う・作る体験 和三盆(和三置き)

和三盆という砂糖を固めて作る和菓子を箸置きとして活用し、食べることもできる提案を行いました。さらに、実際に作る体験を通じて、簡単に作れることや身近な食材との組み合わせも実感していただけるよう工夫しました。
「美味しい」「実際にご飯の時に使ってみたい」「購入したい」「簡単に作れて良いね」「楽しい」などいただけ、また、子どもでも簡単に作れることも確認できました。

③知る体験 練り切りパッケージ

「練り切りを知ることができるパッケージがあったら」をテーマに、プロトタイプの展示と来場者との共創企画ブースを設置しました。
お客様が真剣にパッケージに必要な要素について考えてくださり、今後の方向性が見えてきました。

この3つのブースを通じて、多くの来場者の方に安全に楽しんでいただくことができ、今後の研究に向けた確かな手応えを得ることができました。一方で、実際の運営では予想していなかった課題も浮き彫りになりました。

最も苦労したのは、体験の「適切な時間配分」の設定でした。和三盆の製作体験では、当初5分程度を想定していましたが、参加者の皆さんが予想以上に熱心に取り組んでくださり、一人あたり10分近くかかることが判明。ブースを3つ用意したこともあり、待機中のお客さんへの十分な説明ができない場面が多々ありました。また、琥珀糖モビールの展示準備も想像以上に困難で、一週間前から本番のために400個を飾るための仕込みでは、乾燥具合の調整や破損対策など、細かな管理が必要でした。

しかし、これらの運営上の課題を上回る大きな収穫がありました。

 

これからの和菓子は体験するものなのかもしれない

実際に3日間の展示を通じて、予想以上の手応えを感じることができました。特に印象的だったのは、年齢を問わず多くの方が真剣に体験に取り組んでくださったことです。5歳の子どもが和三盆を型に詰めて「できた!」と喜ぶ姿から、80代の方が琥珀糖モビールを眺めながら「昔の和菓子作りを思い出すわ」とおっしゃる姿まで、世代を超えて和菓子が持つ魅力が伝わっていることを実感しました。また、「これなら家でもやってみたい」「友達にも教えたい」という声を多数いただき、体験が一過性のものではなく、日常に持ち帰ってもらえる可能性を感じられたのが大きな成果でした。

従来の和菓子は「見て」「食べる」ものでしたが、現代においては「飾る」「使う」「作る」「知る」といった多様な体験要素を加えることで、日常生活により自然に溶け込んでいけるのではないでしょうか。
今回の研究を通じて、和菓子の未来は単なる伝統の継承ではなく、現代のライフスタイルに合わせた新しい体験価値の創造にあることが確信できました。これからも「Wokashication」として、和菓子と人々をつなぐ新しい体験の提案を続けていきたいと思います。

 

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